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どうぶつのつぶや記

官民給与比較のカラクリから見えるもの

前回の記事でも触れましたが、公務員の給与が高いという「設定」と「誤解」に基づいて、その給与引き下げの必要性を有権者に訴え、媚を売る候補者や政治家は後を絶ちません。
公務員の給与は国や自治体の業績ではなく、民間の平均に合わせて増減する仕組みとなっています。民間の平均給与が下がれば公務員の平均給与もさがるという仕組みのはずなのですが、冒頭に掲げた候補者や政治家が用いるのは人事院のデータとは真っ向から矛盾するデータ、公務員の給与は民間の給与よりも高いとするデータです。
そのカラクリは、「正規職員」と「全職種、パート、アルバイト含む」平均を比較しているからだったりしますが、その多くは注釈もなしに「違うもの」を並べたデータが官民の給与比較として垂れ流されているという状況です。


候補者や政治家に「官民給与の違い」について語らせれば、その人が知的に誠実かどうか、事実と偏見のどちらを重視するか、自分が望む結論のためには統計の歪曲も厭わないか、それとも不都合な真実でも受け容れる勇気があるのかが良くわかります。
ただし、その「偏見」が有権者との間で共有されていれば、偏見を煽り、同調した者が「有権者の視点に立った」候補者や政治家として歓迎されるわけです。


それはさておき、「ホワイトカラーの常勤公務員」の給与は、「ブルーカラー、非正規職員を含んだ平均」を大きく上回っているわけです。それが示すのは官民の格差ではなく、ホワイトカラーとブルーカラーの給与格差、正規職員と非正規職員の給与格差であり、これこそが真面目に取り扱われなければならない問題であるはずなのですが···。
民間企業においてはホワイトカラーとブルーカラーの給与格差は大きいです。一方で、公務員の世界は、現業と非現業の給与格差はかなり小さめです。背広組も外で働く人も同様の処遇で扱う、模範的な労働環境であるはずなのですが、なぜか世論は、運転手などがそんな高い給料を貰うのはおかしいという風潮のようです。


総人件費についても同様です。公務員の世界においても正規職員の採用を抑制し、非正規職員へのシフトが進められています。
民間企業のワーキングプア問題には社会的な注目が集まる中で、公が率先して「官製ワーキングプア」を増やすのはおかしいんじゃないの?って思ったりするわけですが、こうした「人件費削減」を唱える候補の当選が続くのを見ると、どうやら有権者の大半はワーキングプアを増やすことには肯定的なようです。
また、官民の給与比較について、仮に、「同じ条件」で比べてみて、公務員給与が民間企業の給与を上回っているとした時に、その解決策として、世論が選択するのは、「公務員の(高いほうの)給与を引き下げる」です。低い方の給与を増やすという発想には辿り着きません。ここでも有権者から望まれているのは労働者の給与を引き下げるという選択です。


こうした事例を見ると、結局、経団連や大半の雇用主は「国民の声」をよく聞き入れていることになります。
「ブルーカラーは低賃金で構わない」「非正規雇用を増やすのは構わない」「給与は低く抑えられても構わない」···財界の方針はまさしく、世論の求めるものと一致しているわけです。
劣悪な労働条件が横行する世の中になっても暴動は元より目立ったストすら起らないというのは、実は企業側の行動と国民の願望が合致しているからかもしれません。
そして何より、政策が景気回復、内需拡大につながりにくいのも、こういった国民の自虐的な意識が根底にあるからなのかもしれません。
by kkamoike | 2009-04-25 11:42

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